ぼたもち地蔵 ぼたもちじぞう
萬昌山 長延寺
江戸期所在地:市谷長上寺町
現所在地 :杉並区和田1丁目
最寄り駅:地下鉄丸ノ内線東高円寺駅
民話:牡丹餅地蔵より
杉並区和田の長延寺は、明治の中頃まで市谷にあったが、本堂前の牡丹餅地蔵と呼ばれる地蔵尊には次のような由来が秘められている。
寺がまだ市谷にあったころ、長延寺の門前に長七という桶屋がいた。長七夫婦は寺の地蔵尊に祈願して男の子を授かったが、妻は産後の肥立ちが悪く乳が出ず赤子は日に日に痩せ衰えていった。
長七は悩み、地蔵尊に願をかけ、妻子をお助けくださいと熱心に祈願した。するとある夜、夢枕に見たことも無い小僧が現れ、
「これをおかみさんにあげて下さい。きっと丈夫になります」
と竹の皮の包みを差し出した。長七が目を覚ますと枕元に竹皮に包んだ牡丹餅が置いてあった。
長七は長延寺の住職が小僧を使いによこしたのだろうと思い、早速お礼にいくと、住職は怪訝な顔で、
「お寺には小僧はおりません」と答えた。
その後もこの小僧はしばしば夢枕に立ち、牡丹餅を置いていったが、不思議なことにこれを食べてから妻はめきめき丈夫になり、乳の出もよくなったので赤子も元気に育っていった。
そんなある日のこと、長七は妙な噂を耳にした。町内の弥平という強欲な餅屋に一人の小僧が餅を買いに来るが、小僧は首につるした袋から金を出して餅代を払った。それを見た弥平は、小僧の袋を盗もうと悪心を起こし、ある夜小僧の後をつけていった。そして長延寺の門前に近づいたとき、突然襲い掛かったが、逆に頭をしたたか打たれ気を失って倒れてしまった。やがて通りかかった町内の人に助けられた弥平は、竹の皮に包んだ牡丹餅が散らばる傍に、長延寺の地蔵が倒れているのを見てびっくりしたというのである。
この噂を聞いた長七は、はじめて夢枕に立った小僧の本体を知り、
「あの小僧さんは、お地蔵様の化身だったのか!有難いことだ」
と早速地蔵尊に牡丹餅を供えてお礼した。以来、この地蔵に牡丹餅を供えて祈願すると、乳の出がよくなるといわれている。
日本の伝説5東京 山田書院
2004/12
牡丹餅(ぼたもち)=御萩(おはぎ)
もち米、または、もち米とうるち米を混ぜて炊き、軽くついて丸め、あずき餡(あん)・きな粉・すりごまなどをまぶしたもの。
大辞泉 小学館
ぼたもち地蔵
長延寺 市谷牛込絵図 (1857)
長延寺のあったところは現在も「長延寺町」という地名が残っている
向かって左が「ぼたもち地蔵」
地蔵の台石に「ぼたもち地蔵」と掘り込んである。手前の丸いものは「ぼたもち」の供え物の意であろう。
左:山門 この後ろに地蔵堂がある
下:本堂
扁額
牡丹餅地蔵尊のある場所。長延寺の前は一方通行で、狭い道。境内に駐車スペースあり。